関西勉強会(Kansai Study Group)
委員長 井上敬介
日本PDA製薬学会、関西勉強会は1996年に関西の医薬品製造にかかわる企業や規制当局からメンバーが集まって、サロン形式でいろいろなトピックについて議論を交わしながら、「GMP・バリデーションの情報交換と研鑽により、学術と医薬品ならびに関連業界の製薬技術の向上に寄与する」「科学的な研究活動を行い、得られた最新の情報を会員に提供し、製薬技術の発展と関連技術者の育成に努める」というミッションを掲げて活動を続けてまいりました。
当委員会はオンサイト参加による活発な議論を尊重しながら、毎月の月例会をハイブリッドで開催しております。現在では日本全国の製薬企業、製造及び試験の受託メーカー、設備メーカー、コンサルタント、都道府県庁、PMDAなど多種多様な組織から約60名のメンバーが参加し、下記に記載しました検討グループ分かれていくつかのトピックについて研鑽活動を行っております。参加メンバーの多様な専門性やネットワークを生かしながら、取り扱うトピックも最新の技術、薬事規制に関わるようなフレッシュなものから、じっくりと腰を据えて取り組むべき根本課題まで、スコープを広く取りながら活動を行っており、日本PDA製薬学会のその他の委員会とのコラボレーションなども行っております。
毎月の月例会(原則第一土曜日)では、前半の全体会議で国内外の最新のGMP関連トピックを議論し、後半のグループワークで各検討グループに分かれて、スコープを絞った研鑽活動を行う形式で進めております。また、研鑽の成果については、日本PDA年会での講演、各都道府県でのワークショップやセミナーの実施、書籍や論文の発表など様々な方法で発信しております。
デジタルトランスフォーメーション(DX)グループ
2020年に医薬品製造業においてDX導入を進める方法を検討することを目的に活動を開始した。これまでに、経済産業省の「『DX推進指標』とそのガイダンス」を参考に医薬品製造業におけるDX成熟度モデルを作成し、包括的かつ効率的なDXの進め方について検討し、成果を年会(2021年、2023年)にて発表した。現在は、医薬品製造におけるDXが進んだ現場で必要となる人材、DXを活用した技術導入、デジタルクオリティカルチャーなどの検討を実施している。
逸脱管理CAPAグループ
逸脱管理およびCAPA(是正措置・予防措置)は、医薬品製造所における品質システムを支える根幹的な仕組みの一つである。「逸脱」という用語が日本のGMP省令に導入されたのは、2002年(平成14年)に成立された改正薬事法に端を発する。この改正は業界にとって大きな転換点であり、3年間の周知期間を経て2005年(平成17年)4月1日に施行されたことで「逸脱管理」という概念が初めて制度的に位置づけられた。当時、海外のGMP関連文書では“deviation”の語は広く使われていたものの、公的な定義は明確ではなく、日本における逸脱管理の普及・定着には、体系的な資料整備と継続的な情報発信が不可欠であった。この課題に最初に組織的に挑んだのが関西勉強会のメンバーであり我々の活動の原点となっている。
我々は一貫して逸脱管理およびCAPAの研究に情熱を注ぎ、緊密なチームワークで数々の課題解決に取り組んできた。我々の活動目的は、各社の実務課題や成功事例を持ち寄り、議論と協働を通じて逸脱管理やCAPAのあるべき姿を探究し、製薬業界全体の品質水準の向上に貢献することである。これまでの活動として、根本原因の追究とそれに対するCAPAの実施、予防措置活動の展開、逸脱防止に役立つ7つのポイントの提言、根本原因を効率的に追究するための提案等、規制当局による指摘事例や最新ガイドラインと照らし合わせながら、ケーススタディを通じて「逸脱管理とは何か」、「実効的・効果的なCAPAとは何か」といった根源的な問いを絶えず提示し、議論の深化を促してきた。これらの成果は、日本PDA製薬学会の年会発表、業界団体主催の講演会、さらには PDA Journal や PHARM TECH JAPAN を通じて広く発信し、ベストプラクティスの共有に寄与してきた。我々は今後もこうした活動を継続し、製薬業界の品質向上に貢献していきたい。
GMP査察事例検討グループ
GMP査察事例検討グループでは、医薬品製造におけるGMP査察・監査について研究を行っている。この研究の目的は、患者に安全で有効な医薬品を届けるため、査察・監査で指摘される問題点とその背景を正確に理解し、製品品質への影響を考察することである。近年、医薬品製造所でのコンプライアンス違反事例が多く報告されている。このような状況を受けて、単に査察や監査に頼るだけでなく、「なぜその対応が必要なのか」という本質を理解することが重要となっている。医薬品の製造に携わる者は、当事者意識を持ってリスクに向き合う姿勢が求められる。
このような課題認識のもと、研究では国内外の規制当局による指摘事項や行政処分事例から、議論するテーマを選定している。本グループでは、指摘事項に対する「具体的な対応策」への提言に重点を置き、従来の成果物ではあまり示されていなかった現場での実践方法まで提示することを目指している。各製造所の特性を考慮しながら、想定される事象に基づいた実用的な対策を示すことで、理解しやすく実践的な内容となるように研究を進めている。
コンプライアンス検討会
近年、医薬品製造販売業界で重大な不祥事が繰り返されていることは、業界関係者の多くが深刻に受け止めているのではないだろうか。しかし、どのようにしてその再発を防ぐべきか、具体的な方法について悩んでいる企業や組織が少なくないのが現状である。そこで当グループでは、不祥事発生の背景や原因について深く分析するとともに、その失敗から学び、再発防止に向けた行動のデザインについて検討している。
本グループの活動には、企業または組織が自己修正能力を高めるためのアプローチの構築が含まれている。特に、「なぜ企業内で不正を未然に防ぐ機能を持つことができないのか」「なぜ同じ間違いが繰り返されるのか」という課題を、社会心理学的な視点や不正のトライアングルの理論と重ねて考察している。これまで業界を問わずさまざまな第三者委員会の資料を読み解き、企業組織として注意すべき点や、学ぶべき教訓について学会で発表を行ってきた。
この活動を通じて、組織が自己修正を図り失敗から学ぶ力を得る機会やアイディアを広く提案する。
今後は、不正や不祥事の未然防止につながる行動デザインの組織モデルの提案や各企業や組織が自己点検と継続的な改善を行うためのワークショップ、セミナーの開催、業界内外の専門家との連携による情報交換や知見の共有を進めていく予定である。
GMP構造設備適正化グループ
GMP構造設備適正化グループでは、主に非無菌製剤がどのような環境や構造設備で製造されるべきかを検討・研究しています。
本グループの活動目的は、中小規模の医薬品製造所では、構造設備の設計・構築を専門に担当する部門が設置されていない場合が多いという現状にあります。そのため、当局や複数の委託先からの指摘に対し、場当たり的な対応を余儀なくされることが多く、結果として矛盾や過剰な仕様が生じてしまうことがあります。
そこで、国内外の規制当局による指摘事項を整理・分析し、「具体的な対応策」の提言に重点を置いて活動しています。製造室の用途や環境グレードに応じて、必要最低限の構造設備要件を考察し、非無菌医薬品の製造工場や作業室の設計・構築の際の指針となる資料の作成を目指しています。
本グループの活動および作成資料を通じて、医薬品製造者が自らの製造所に適した構造設備や製造環境を主体的に検討するきっかけとなり、中小規模製造所全体の製造環境・構造仕様の底上げと、過剰仕様の抑制に寄与することを期待しています。
教育訓練グループ
教育訓練グループは、2005年にKSGが分科会制を敷いた当時から続く、長い活動実績を持つグループであり、医薬品産業におけるGMP教育訓練のあり方について多くの議論を重ねてきた。近年、医薬品産業において品質や安定供給に関する課題が顕在化しているが、その根底には「GMP教育の重要性は理解しつつも、具体的な取り組み方に悩んでいる」という問題が存在している。これを受け、本グループではGMPの本質とはどのようなものかといった観点から、新たなアプローチを試みている。活動のゴールは、PQS(医薬品品質システム)を維持・向上させるSME(Subject Matter Experts:特定分野の専門家)を育成・輩出するための教育体系を確立し、その知見を共有することである。このゴール達成のため、「適時・適切な判断を行う能力を養うためのセンスを磨く(感性・判断力)」、「そのセンスを下支えする高い倫理観を醸成するためのマインドを鍛える(姿勢・意識)」という二つの要素に着目して研鑽を進めている。
2025年の活動実績
2025年2月:兵庫県製薬協会GXP研究会(2024年度 第6回GXP研究会)(逸脱管理CAPAグループ)
2025年4月:書籍発刊記念講演会 千里ライフサイエンスセンター(旧GMP適正管理検討グループ)
2025年6月:インシデントの導入と事例紹介 PDA Journal GMP and Validation in Japan Vol.27, No.1 (2025)インシデントの導入と事例紹介 (逸脱管理CAPAグループ)
2025年7月:令和7年度 滋賀県製薬技術セミナー第1回薬業スキルアップセミナー(逸脱管理CAPAグループ、教育訓練グループ)
2025年7月:医薬品製造の未来を拓くDX推進と技術革新(1)成熟度モデルを使ったDXへの取組み PDA Jounalof GMP and Validation in Japan Vol.27, No.1 (2025)
2025年7月:医薬品製造の未来を拓くDX推進と技術革新(2)DX事例紹介 PDA Jounalof GMP and Validation in Japan Vol.27, No.1 (2025)
2025年11月:GMPの本質に迫る人材の育成(センスを磨く)PHARM TECH JAPAN Vol.41 No.14(2025)(教育訓練グループ)
2025年11月:兵庫県GXP研究会(2025年度第4回GXP研究会)(GMP構造設備適正化グループ、GMP査察事例検討グループ)
2025年12月:日本PDA製薬学会 第32回 年会
